生きてく弱さ




希望と幻想とを混乱させるような、
間違った前向きさを与えるのは、罪にはならないのだろうか。




「間違った前向きさ」というのは
現実に則していない、ある種の変身願望のことだ。





















自分の弱点を克服して、
マイナスを完全なプラスに替えていける人など、どれほどいるだろうか。









そんなパワフルな方々は、
せいぜい15%以下の限られた人たちだろう。
残念ながら。


そして変身した自分に出会えた15%の人の影には、
挑戦したけれど変われずに挫折して言った人たちだって大勢居るだろう。



その人たちの傷を思うと、心が痛む。
間違った前向きさを取り入れて実現可能だと思い込んだ。
あるいは、思い込まされてしまったのだろう。







かわいそうに。















だいたいの人は、自分の弱点を解消しようとして必死になろうとも
弱点を棄てることは出来ない。
ましてや、プラスに変えることなど出来ない。



じゃあどうするのかというと、弱点に振り回されながらも、
上手く付き合っていく方法を身につけていくことで
妥結する。



前向きで現実的な妥協をするのだ。





現実的な妥協と言うのは
弱点を取り除く時間と労力よりも、うまく理想の自分と弱点を持つ自分との
折り合いをつけながら生きていく事。





弱い自分は嫌だ!絶対に変わってやる!!


ではなく、


弱くてダメな自分でも、まぁ仕方ないか。
って弱さを受け容れていく。


やれることやったし、それなりに苦労も努力もした。
それでも克服に至らなかったのだから。
もはや上手く付き合っていくしかないのだろう。



っていう
悟りにも似た、大人の結論を出す。








なぜ大人の結論に至る人が多いのかと言えば、
生きていかなければなら無いから。



人生は100mや200mの短距離走ではない。
イチイチ、一瞬一瞬の場面、一つの山に全力を使っていては、
うまく生きれないことを人間は賢いので学習していく。






そういう風に”今”に執着しすぎずに生きる。






そうすれば、
弱点だらけの自分を方向転換するよりも、
そういう自分を受け容れて、
自分と言う枠の中で手に入る幸せを噛み締めて生きていく方が
長距離走の人生においては、
豊かになれるって自分を納得させることが可能になる。















私は絶対変わる!夢を掴む!成功する!!
発する言葉で自分は作られていくから、ポジティブな言葉を使おう!!!
言葉を変えれば習慣が変わって習慣が変わると性格が変わるんだよ!!


私にも出来るんだから、あなたにだって出来るわよ!!!!












っていうみたいな、
自分を棄てて新しい理想の自分になれると信じている人、
あるいは、信じさせたられている人たちにペースを乱されて
実らない努力、高すぎる理想、に労力を使って
心を壊し身体を壊わしてしまうのは
あまりにも空しすぎるし。



そんな犠牲者をこれ以上輩出したくない。







理想に届かなかった自分にさらに絶望したり、
等身大の自分で過ごしていれば得られていたモノを失ってしまうのも
大きな痛手だ。











弱い自分から脱皮することが強さの象徴だ!
みたいな風潮があるけれども、
本当の強さってのは、
残念だけど沢山の弱点を抱えているダメダメな自分を
受け容れる事なのではないだろうか。






弱い自分を蹴っ飛ばすのではなく、
ありのままの弱さを受け止める強さ。


これこそが、生きていく上で
本当に大切な”強さ”なのではないだろうか。







人は自分の限界を楽に越えて努力できたり我慢できたりする。


自分でも、「あの時の自分は、あの状況に、良く耐えられたなぁ」って
振り返って思う事って、結構あると思う。





だけれども、
人間は自分が思っているよりもずっと壊れやすい生き物でもある。



それこそ、弱点だらけで力不足を痛感する場面に遭遇する機会の方が
明らかに多い。




そんなんときに、弱点を取り除く強さよりも求められるのは
弱さ抱えたままでも、それなりに壁を乗り越えていける強さ、つまり、

弱点を持っている自分を受け容れる強さを持っているのではないだろうか。

















信念と自信を持って、夢や目標に向かう人を止めようとは思わない。
むしろ、応援したい。
限界を突破して生まれ変わる姿は美しいものだ。




しかしながら、誰もが限界を突破できるほど、
現実は温かくない。


弱点という課題を強さに結び付けられる人など
ほんの一握りだ。




大抵の凡人は、悲しいけれど
弱点は弱点のまま、一生お付き合いしていかなければならない。

弱点だらけでどうしようもない自分と。









だとしたら、克服できない弱点を嘆くより
弱さを受け容れていくことこそが、人間に必要な強さなのでは無いだろうか。





いつの日も弱さ庇いながら生きるのが、
人間の人間らしい姿なのではないかと思うのだ。









ただ、弱さを克服できない自分を受け容れる事が出来るようになるには
それなりの時間が必要だ。



その時が来るまでは、大いに弱点を抱えた自分を変えようとして苦しむ時間も
必要なのだと思う。


弱い自分を抱えていくと言う折り合いが自分自身と付くまでは
もう少し、苦しみの時間も、今のあなたには必要なのかもしれない。











けど、心配要らないぜ。
時は無情なほどに全てを洗い流してくれる



っていう桜井さんの言葉は間違いないから。




時間が、あなたの最強のサポーターになってくれるから
安心して今を苦しんでください。




乗り越えたなら、いつか笑い話として
多いに盛り上がりましょう。













強さを創造するよりも、弱さを受け容れることで
世界は、あなたにとって、ちょっとだけ優しくなってくれるかもしれない