悪いのは、あなた
- 作者: 香山リカ
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 2009/08/08
- メディア: 新書
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原因が”私”じゃないなら、薬は要りません
ここ数年、「クスリはいや」という人の中に
独特の考え方をする人たちが増えていることがわかる。
彼らは、誤った薬物の知識や情報に踊らされてそれを拒否しているのではない。
そもそも、医学的な診療の手順そのものがイヤなのである。
例えばあるとき、うつ病のひきがねになったストレスを探り当てようとして目の前の患者さんにあれこれ質問をしてみたことがあった。
職場や友人関係はどうですか?
などと質問しているうちに、相手はどんどん不機嫌になっていった。
そしてこう言ったのだ。
「先生の言い方を聞いていると、
なんか私の人生には色々な原因があって、
それをうまく処理できないから私がうつ病になった、
とおっしゃりたいみたいですね。
ということは、今回のうつ病の原因は、私自身だということですか。
私が弱いからそのせいでうつ病になった、と先生は言いたいのですね」
もちろん、そんなふうにうつ病の原因をその人の人生や心の内面だけに
求めようとしたつもりも、ましてや本人を責めるつもりもなかったので、
私はあわてて否定した。
「うつ病は何も原因がなくても起きる病気ですから、
あなた自身に何か問題があるだなんて言うつもりはなかったのですが」
それでも納得できない、という顔で帰っていった
その人は次の週、別人のような晴れやかな顔で診察室に入ってきて
こう告げた。
「先生、やっぱり私が悪いわけじゃなかったです。
あれから知人に紹介されて、気孔の先生に診ていただいたんです。
そうしたら、クビがコチコチで、気や血液の循環が悪くなっていると
言われました」
ちなみに、この人は、大学院を卒業して専門職についているヒトデ、
何でもすぐに信じるタイプにはとても見えなかった。
そんな頭脳明晰な人が、気功の先生の話を鵜呑みにしてしまったのは、
その仮説に説得力があったからなのか?いや違う。
先回の診療で「うつ病の原因はあなた自身の内面にある」と
言われたような気がして不快になっていたところ、
気功の先生に
「あなたには何の責任もない。それは宇宙のせい」といわれたのが大きかったのだろう。
「そうか、私のせいじゃないのか。」とより大きなもののせいにするkとで
「それなら仕方ない」とうつ病を受け入れ、気分を軽くすることができたのだろう。
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