その前に
☆自殺したいと打ち明けられたら
誰でも良いから打ち明けたのではない
自殺は何の前触れもなく起きるというよりは、
それに先行して様々なサインが発せられる。
ほとんどの場合
自殺願望が誰かに向かって発せられている。
「死ぬ、死ぬという人間は死なない」
というのはまったくの誤解である。
自殺者の大多数は最期の行動に及ぶ前に、
特定の誰かを選び出して
絶望的な気持ちを打ち明けている。
その「孤独な魂の叫び」を受け止めることができるかできないかが
自殺予防の成否に直接かかわってくる。
しかし、このような気持ちを患者から打ち明けられると
強い不安が湧き上がるのが普通である。
患者の訴えを正面から受け止められる人ばかりではないのが現状である。
ただし、最初に覚えておいて欲しいことがある。自殺を打ち明けた人は
誰でも良いから自殺したい、と話したのではなく
意識的・無意識的に特定の「誰か」を選び出して
絶望的な気持ちを打ち明けている。
特定の誰かとは、家族かも知れないし友人かもしれないし担当医かもしれない。
☆うつ病の長期化・治りにくい要因
1.治療目標の間違いとその是正
うつ状態の回復が、うつ状態の消滅だと考えてると危険です。
人間の日常行動は無意識にパターン化していてから
薬で一時的に良くなったなぁと思っていても、同じパターンで抱え込んだストレスを
同じパターン(の人間関係や考えた方)で、再び感じてしまうという事が繰り返されるので
症状が軽快したからといって安心できない。本当はコミュニケーションの仕方、自分の人間関係のクセを
把握して少しずつ人との付き合い方を変化させていき
同じパターンで感じるストレスを回避しなければならない
(例えば、いやだなぁつらいなぁと身体で感じていても残業を笑顔で引き受けてしまうとか)
2.治療者の観察不足や判断の誤り
治療者にはうつ症状の正確な把握と、原因に関しての正確な探求が要求されます。
これがなされないと、患者は「この先生は、自分のことをわかってくれていないのではないか」
という疑念を深めますし、また見通しや今後の治療方針も正しいものが立てられず
うつ病が長引いてしまうことになります。
うつ病の症状も原因も大変に複雑なものです。ですから、これらの正確な観察・把握は結構難しく
治療者側にも相当の努力が要請されます。
3.薬に対する幻想
薬に対する過剰な期待を持っているおり薬を万能だと信じ
自分は何もしなくても服薬だけで一挙に幸せで楽になるといった幻想を抱いているケース。
薬はあくまで人間が本来持っている自然治癒力の助けになるに過ぎないし
落ち込んで誰とも会いたくなくなったり全てが嫌になってしまう思考を落ち着かせて
正しい人間関係を築くための応援部隊に過ぎないのだということをわかってもらいたい。
薬はある程度は役に立つという認識を持つこと。
それほどに期待はしないが、飲まないよりは飲んだほうがましであるといった程度の
認識を持たせることが大切
4.ストレス状況の持続
本人に負担を与えている状況(家庭、職場、友人、における人間関係など)が
なかなか変化しないため、うつ状態が改善しない場合があります。
職場での役割があっていない、上司が猛烈に仕事を強制する人でストレスが多い、勤務時間が長い、などなどです。
ただ、本人のキャリアやプライド、金銭面のこともあるので
一概に職場をすぐにかえなさい、とは言えないのが現実です
5.薬が合っていない、量が不適切
治療者が薬を正しく使えていない場合も長期化する可能性があります。
薬が正しく処方されていない患者が立ち直りのきっかけをつかめないこと、
うつ気分が改善するという良い体験を持たないので
いつまでもうつ病に対する恐ろしい印象に
圧倒されるということがあるからです。
薬が絶対ではありませんが患者は気分の改善を一番に望んでいるわけですから
治療者はいろいろ工夫して薬を処方する必要があります。
6.支援者・サポーターの不在
うつ病になりやすい人のなかには
人間関係より業績や自分の気分の良し悪しばかりに目がいき
周囲に理解してもらえる人間関係を育ててこなかった人や
周囲の人間関係(家族、夫婦)が、かなり悪化している人が多くいます。
つまり、援助が必要な人ほど、援助してくれる人がいないという悲劇が生じます
このようなときは医者が援助者になることになりますが
近しい家族や恋人などが援助しようとしすぎて
本人が解決すべき問題まで引き受けてしまうわないように気をつけなければなりません
7.不十分な休息、無理の有る早すぎる社会復帰
休息が充分だと、ゆとりが生じますが
不十分だと焦りがまさります。
こんな場合、ゆとりが充分になってから
社会復帰するほうが良いのは言うまでもありません。
8.絶望感、あきらめ
再発を繰り返したり長引いたり、自分のうつ状態の原因が
理解できない場合に絶望感が貯め込まれ、それがまたうつ状態を長期化させるという悪循環を生んでしまいます。
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